先日、当方の次の記事の閲覧がありました。
ref. 映画「ゴーストバスターズ」にまつわる話題
https://akatuki-724.blogspot.com/2016/02/blog-post_16.html
それを記念(?)して、以下、作品中で出ているCASIO PB-100についての「随想」を。
CASIO PB-100は、今でも「銘機」だったのではないか、と。
当時のポケコンというと、SharpがPC-1210/1211、PC-1501, PC-1250/1251といった製品を出しており、CASIOはFX-501/502P, FX-601/602P, FX-702Pといった製品を取り揃えていた筈。
FX-501/502P, FX-601/602Pは、ポケコンではなくプロ電という製品でしたが、FX-702Pは、ポケコンスタイルの、BASIC言語搭載の製品だった。FX-702Pは、当時の定価が39,800円だったはず。
所が、PB-100は定価 14,800円と、まさにブロックバスターでした。
PB-100は、低価格で勝負するためなのか、色々と工夫が盛り込まれたらしい。
当時のポケコンの液晶表示器、多くは20桁以上の表示でしたが、PB-100のそれは12桁で、画面右には、隙間を埋めるがごとく「モード一覧」を印刷しておりました。これなどは、液晶の桁数を削る事でコストダウンを図った、一つの例と言えそうです。
その昔、CASIOは低価格電卓「カシオミニ」を世に問うたおり、計算表示の桁数を6桁に抑える事で、コストダウンを図ったというのは有名な所です。
当時、論理回路を駆使して加算回路などを構成したそうですが、桁数が増えると、その分、加算回路などを稠密に構成し、ICへ盛り込まないとならなかったのですが、6桁で抑えると、回路規模がかなりコンパクトに出来るとの事で、コストダウンを図ったのだと言われております。
PB-100の5x7 dot matrix character液晶表示器も、桁数を少なくする事で部品コストを下げる工夫があったのではないか、と。
PB-100のプロセッサは「VLSI採用」と謳っておりました。
昔のICは、集積度によって、SSI (Small Scale Integration), MSI (Mid Scale Integration), LSI (Large Scale Integration)と呼び分けられており、LSIよりも集積度が多いものをVLSI (Very Large Scale IC)と呼んでおったそうです。
ポケコンのハードウェアは、プロセッサと液晶コントローラが主なコンポーネント、と言えそうですが、PB-100のプロセッサは、液晶コントローラをまとめた、当時としてはかなり大掛かりなもので、VLSIとしたらしい。当世、流行りのSoC (System on Chip)のハシリの様な感じだった。
ref. Casio FX-700P - hardware
http://www.pisi.com.pl/piotr433/hardware.htm
海外で発売されたPB-100相当品「FX-700P」の情報であります。
これによると、SoCプロセッサ・HD61913A01には、ROMも内包し、キーボードピンも出ている。こうなると、「ワンチップ・ポケコン」であります。
CASIOのポケコン、主にHitachiの供給するプロセッサが使われてきたらしく、HD61913A01の型番から、このプロセッサもHitachi製と思われます。今日、安価なモノクロ液晶コントローラの主流は、Hitachi製が多いと言います。この頃のデザインが継続されているのかなぁ ?
PB-100では、低価格を追求していたので、液晶も12桁で抑えたのか、と思えるのであります。そして、表示の少なさを「スクロール表示」させるというソフトウェア面でカバーした。なかなか、ウマイ事を考えたのです。
他にも、PB-100のコストダウンの追求は「マイクロマネージメント」的に、随所に伺えます。
例えば、シフトキーの横に、Fnキーの「穴」とランドが設けられていたというのは有名であります。後に、FX-700Pだったか、で、ここにFnキーを設置したものが登場しました。
今にして思うと、BASICによるプログラムが動いて、液晶表示版に結果を表示する事の出来る、小気味よい製品でした。規模こそ違うながらも、当時の8bit PCが出来る様な事を、安価に、そして持ち運んで何時でも使えるのでしたから。
ポケコンは、出自がプロ電の様な所もあり、BASICもBCD計算が十全に行えました。それで様々な技術計算の用途にも利用されるなど、プログラム関数電卓としての利用が進んだものでした。
一方、CASIO BASICでは、KEYコマンドにより、リアルタイムキー入力にも対応していて、簡単なゲームプログラムも楽しめたものです。
SharpのPC-1210/1211には、この機能がなく、上位機種のPC-1501になって搭載されたのですが、その分、価格も高くなってしまった。
そこへ、PB-100が、安価という武器で殴り込みを掛けたのです。
Sharpも落ち着いては居られなかったのか、PC-1501とは別系統のPC-1250/1251シリーズを投入しました。1250/1251は、サイズがPB-100よりも小さく、メモリも2KB/4KBと大きく液晶も24桁と十分な大きさがありましたが、それだけにコストダウンには至らず。
その後、液晶表示器の桁数を16桁に抑えたPC-1245を投入するのですが、機能はPB-100より上ではあるものの、価格 (17,800円だったはず)は今ひとつ及ばないのでした。